大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)905号 判決 1949年1月25日

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人丸下紫朗の上告趣意第一點について

記録によると本件事犯は所論の如く當初詐欺罪として起訴されたところ第一、二審ともこれを賍物収受罪として認定處斷したものであることは明瞭である。しかし裁判所は公訴事実については、その基本たる事実關係の同一性を害しない限り、檢事の付した罪名やその指摘した事実等に拘束されることなく、自由に審理判斷し、他の罪名に當る事実を認定し得ることは勿論であって、本件公判請求書記載の詐欺の公訴事実と原審認定の判示賍物収受の事実とを彼此對照するに、その間事犯の態様に差異は認められるが、いずれも他人の所有にかかる財物を不法に領得する犯罪たる點において互に密接の關係を有するから、その基本たる事実關係においては同一であると解するを相當とする。然らば原審は本件公訴事実の範圍内において判示賍物収受の事実を適法に認定處斷したものということができるから、原判決は所論の如き違法ありとはいえない。論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する。)

よって刑事訴訟法施行法第二條舊刑事訴訟法第四四六條に從い主文のとおり判決する。

右は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例